本のかんたんな紹介
日々起きてしまう失敗に対する取り組み方、防ぎ方、向き合い方を解説している本。 著者は工学畑の出身で、工学の分野で発生する数々の失敗を分析・対処を研究してきた。 本書は、失敗に対する工学的な分野での対処、防ぎ方、向き合う時の心構えを教えてくれる。
なぜこの本を読んだのか
仕事で日々いただく指摘や、失敗してしまった時の反省を、次の機会に活かせているか不安だったから。 同じ失敗を二度と繰り返さないようにしたいという思いがあった。
要点をいくつかまとめる
ミスは減らせる
- ミスをするかどうかは、ミスを防ぐコツを知っているかどうか。
- ミスを防ぐためには、人間の注意力に頼るのではダメで、ミスを起こさない仕組みを作ることが大切。なぜなら、人間の注意力には限界があるから。
ダブルチェックについて
- 決まった手順を効率的かつ間違いなく進めるために、チェックリストの使用はとても有効
- チェックリストは、確認する事項を具体的・細かく記述すると良い。
- 日本式の「〜を確認する」は、内容が曖昧になりがち。
- アメリカ式「この基準がXXであること」とチェック基準を具体的に書くことで、ミスが減る。
- ダブルチェックは有効。ただし、ふたりめのチェックは、手順を変えて実施することが大切。
- 一人目が見逃したチェック事項は、二人目も同様に見逃しやすい。
- 二人目は逆順でチェックするなど、見方を変えるとミスを見つけやすい。
- チェック時の対象の状態を変えることも有効。
- プリントアウトして、その内容をチェックするなど
- ダブルチェック時に音読するなど。
最小・最短・効率的なしごと
- 時間やコスト、労力を最小にする。
- 仕事の本質を整理し、優先順位を見極めることが大切。
- 最小単位のものに取り組むことで、労力やかける時間は減り、発生するミスも減る。
- 時間と労力のバランスを見ることが大切で、労力をかければかけるだけ良い、ということは無い。
仕事を滞らせないために
- 仕事を滞らせないために
- マルチタスクについて
- 複数のタスクを雑多に並行するのは、効率が落ちてしまう。
- 生み出す仕事と整理・調整する仕事を、並行して走らせると良い。
仕事のコミュニケーションについて
- 仕事のミスは、コミュニケーションの不備に起因することが多い。
- 完璧なコミュニケーションは難しいという前提に立つ。
- 対象を視覚化し、目にみえる形で共有することは有効(共有カレンダーの利用など)
- 仕事の目標は、明確的かつ具体的に、言葉で表現する必要がある。言語化することで目標が明確になり、また他者とも共有しやすくなる。
- 目標に向けたプロセスを分解することで、実行すべきタスクに落とし込むことができる。これをこなすことで、必ず目標を達成できる。
- 受け取った指示をほぐして具体的にし、依頼者に確認することで、コミュニケーションの齟齬によるミスは防げる。
- 詰まったときは、ベテランに頼ることも大切。
- 初心者や外の人は先入観がないため、素直なアイデアを出してくれる時がある。
- 外の人への説明は、ものごとの理解において大いに有効
- 外の人のアドバイスを素直に受け入れることも大切。
逆転の発想で失敗を考える
- 通常は「どうすれば失敗を防げるか」を検討するが、事前にすべての失敗を想定できるわけではない。
- フォルト・ツリー・アナリシスという手法が有効
- 仕事の失敗を想定し、「どうすれば失敗するか」を考えるやり方。
- 考えうる要因とその可能性をすべて洗い出し、実際に起きる可能性が高いものを対処する。
- 失敗を繰り返さないためには、くよくよせず、元気になることが大切。
- ただし、失敗を経験したあとに元気になる(あるいは失敗した人を励ます)のは難しい
- 事実をポジティブに捻じ曲げ、その失敗に意味があった・違う視点からプラスに捉えることができる、と考える。
- 失敗するとがっかりするが、くよくよしている暇はない。気持ちを強く持って、マイナスを取り戻す必要がある。
- どうしてもうまく行かないときは、やり方のどこかに問題があることが多く、がむしゃらに努力してもうまくいかない。
- 一歩引いて俯瞰してみて、努力のベクトルがあっているか・取り組みの課題を冷静に分析することが大切。
- ベテランに相談してみたり、目標を少しずらしてみるのも良い。
仕事のミスを防ぐために
- ミスは4つに分類できる。それぞれの対策がきちんとできれば、個人のミスは防げる。
- 学習不足
- 計画不良
- 伝達不良
- 注意不足
注意不足を防ぐために
- 適切なタイミングで注意喚起すること。カレンダーの通知など。
- 抜けもれなくダブルチェックすること。
- 注意力が散漫なときでも、きちんとタスクを遂行できる仕組みをつくることが大切。
伝達不良を防ぐために
- どんな職場でも、伝達不良は起こり得る。暗黙知は、そのままでは新人に引き継がれないため。暗黙知を文書に落とし込み、形式知に変える必要がある。
- 小手先の表現スキルに頼るのは良くない。結局はなにを伝えたいかがすべて。自分の言葉で表現することで、認識の正誤を明らかにし、伝達不良を防ぐことができる。
学習不足にならないために
- 娯楽が多い今日、学習に継続して取り組むのは難しい。
- 何らかの(たとえ不純であっても)動機を作って取り組むしかない。
計画不良を防ぐために
- 目標に向けて費やすリソースと期間の見積もりをきちんと考えること。全力で取り組むのではなく、現実的なリソースを踏まえて考えること。
- その結果について、うまくできた・できなかった理由をきちんと分析すること。
失敗についての考え方
- 失敗したときは、潔く謝ることが大切
- 相手の立場に立って謝ることが重要。
- ものごとに取り組むときに、失敗はつきもの。
- 小さな失敗にこだわると、何もできなくなってしまう。
- トライアンドエラーで別の手法で取り組むことが大切。失敗しても落ち込まず、試行錯誤を繰り返すこと。
- 一つの失敗を長い時間軸で捉えることも大切。
- 長い時間軸で考えると、一つの失敗は成功に至るステップの1つとなる。
- 失敗を克服するときに、人は大きく成長するもの。
読み終えた感想
- これまでは、仕事でミスをしてしまった時はネガティブに捉えていた。失敗が続くと、自責的な思考になってしまうこともあった。
- この本を読むと、失敗はコツを掴むことで確実に回避できるし、失敗自体も前向きに捉えることができると考えられるようになった。
- 失敗は誰しもが経験するものだから、失敗への向かい合い方・対処法を知れるいう点で、一読する価値があると思う。